Share

14.結婚の理由 Side.大雅

Author: 桜立風
last update publish date: 2026-07-18 11:12:35

「……はい、カーットっ!」

助監督の声でハッと我に返った。

胸ぐらをつかんだ状態で、ヒロイン役の花園ミミを見下ろす。

「大雅さん、迫真の演技で素晴らしいんだけど……ミミちゃんが振り回されてるから、少し力を抜いてやって」

「あ、すみません」

演技に集中できないと、つい力が入ってしまうのは俺の悪い癖だ……胸ぐらを離し、助監督とミミ、両方に向けて謝罪した。

「権堂さんに聞いたよ?……探してた人、見つかったんだって?」

「本人じゃない。……その娘」

「おびき寄せる道具にするつもりでしょ。うまく引っかかるといいけどね」

撮影の合間、わずかな休憩時間にミミに話しかけられた。

彼女は、2年前の事故を知る数少ないうちの1人。

……詳しい事情までを知るのは、彼女と権堂の2人だけだ。

「おびき寄せるのは、無理そうだな。今どき携帯を持ってないんだから」

2年前、信じられない知らせを受けたのは、こんな風に撮影の合間で休憩をしている時だった。

それは後に俺の代表作となる日韓合同映画「境界線のレクイエム」の撮影で海外ロケをしていた時のこと。

「……大雅さん、携帯が何度も鳴っています。確認しますか?」

権堂が手渡
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter
Comments (1)
goodnovel comment avatar
yuu
香坂って花ちゃんの父親? この人は家族を裏切った上に一体どこで何をしてるの?
VIEW ALL COMMENTS

Latest chapter

  • スターの冷たいプロポーズ〜今さら愛してると言われても……   52.守るために……

    「はなちゃん……ちゅくしんぼないよ?」庭に出て遊んでいる春希が、ソファに座る花に声をかける。「今はないねぇ……つくしんぼは春に出てくるよ?」「あちゅいのおわったらはる〜?」「ううん。寒いの終わったら春!」理解したのか、ニコッと笑う春希がひどく可愛らしくて、花もサンダルを履いて庭に出た。「……こっち、さわっちゃだめ」「うん!覚えてた?えらいね〜」庭の一部を使って家庭菜園にした。植えたのは大根とほうれん草、そして白菜。「たいがーとみんなでやったの。にょきにょき〜って、でてくるんだよ」「そうだね!芽が出るの、楽しみだね」抱き合って泣いた夜から数日後、大雅はめずらしくオフだと言って朝早く起きた。「今日は、家庭菜園の日だ!」やる気満々の姿でガッツポーズを作る大雅を見れば、当然春希も早起きする。大雅の運転でホームセンターに出向き、野菜を育てるのに適した土やスコップなど、必要なものを買いそろえた。早朝のホームセンターには客も少なく、難なく買い物ができてホッとした花。家に帰ると早速庭に出ようとする大雅を慌てて止めた。「……大雅さんが、庭を耕すんですか?」「当然。俺以外に適任者はいないと思うが?」「だ……だめですよ!まだまだ紫外線が強力に振り注いでいるのに日焼け止めも塗らないで。ドラマの撮影、まだありますよね?」なぜか家庭菜園への熱をみなぎらせ、無防備なTシャツ姿で庭に出ようとするのを、花は必死で止めた。「まずはですね、ツバの広い麦わら帽子の下にタオルを挟んで首の日焼けを防いで、この割烹着を着て虫対策をしてください」暑いと文句を言う大雅を寝室に押し込め、くるぶしまでのジャージに着替えさせると、シューズインクローゼットから長靴を持ってきて渡した。「こんなの、うちにあったのか……」「はい。去年出演したバラエティ番組で農作業をしたので、その時持ち帰ったんじゃないですか?」記憶をよみがえらせ、納得する大雅。「なんでそんなこと知ってるんだ?」「大雅さんの出演したバラエティは全部観ましたから」なんでもないことのように言う花。大雅が頬を染めて見つめたことに、彼女はまったく気づかない……「あ、そうだ!……サングラスもしてください!紫外線は目からも入ると言いますので」「これで……いいのか?」タオルを垂らした麦わら帽子、白い割烹着とジャージ

  • スターの冷たいプロポーズ〜今さら愛してると言われても……   51.夏から秋へ…変化の兆し

    「野菜の種か。家庭菜園を庭でやりたいって前に言ってたやつ?」その夜、帰宅した大雅を迎えた花。……ソファの前のテーブルに、野菜の種が置きっぱなしだったことに気づいた。「そうです……早々に種を買っちゃって」「やってみたらいいよ」「はい……」すでに春希は寝室で眠っている時間。花は大雅の前に夕食を用意した。「あ、今日……春奈さんと圭一さんが来てくださいまして」「そうみたいだな。メッセージが来てた」「は……春くん大喜びで、もう、飛んだり跳ねたり大変で……あの、だから今日もいつもより早く寝ちゃって……」話さなければいけないことがいくつもあるのに、そんな話題を出せば、私たちの暮らしが変わってしまいそうで怖い。「春希は、本当にあの夫婦に懐いてるよな」「え?」言い方に違和感を感じて、つい聞き返してしまった。「実は少し前から2人に言われてるんだ。……春希の、幼稚園入園のこと」「あ、そういえば、そんな年齢ですよね」「そう言われて、少し考えているんだけど」花が用意した料理に手を付けながら、大雅は思い切ったように話し始める。「鈴里大雅っていう存在が、幼稚園や小学校に通うようになった春希に、相当な不便を強いるようになるんじゃないかって」押しも押されぬ国民的スターが保護者である子供を、近所の幼稚園に通わせるわけにはいかないということだ。「それじゃ、芸能人の子供が多く通うような幼稚園に?」そんなところがあるのかわからないけれど……そういう場所に通わせるとしたら、大雅さんは春くんと一緒に園内見学とか行くのだろうか。……そしたら、子供と一緒に暮らしていることが世間に知られるかもしれない。自分の子供ではないとしたら誰の子なのかと話題になって……亡くなった姉の子供だと暴かれたら、春くんもマスコミに狙われる?同時にもし……私との結婚が公になったら。その関係性は、センセーショナルに世間を賑わすだろう。そうなった場合、一番にダメージを負うのは誰?大雅さん……そして春くん……スキャンダルでドラマやCMを降板になったら、莫大な違約金を背負う可能性があると聞いた話を思い出した。「花……?まだ、決まったわけじゃないから」「え……あの、ごめんなさい。ちょっと考え事をしていて」いつの間にか大雅の話を聞き漏らしていたらしい。テーブルの向こうから花の手を取り、じ

  • スターの冷たいプロポーズ〜今さら愛してると言われても……   51.夏から秋へ…変化の兆し

    「野菜の種か。家庭菜園を庭でやりたいって前に言ってたやつ?」その夜、帰宅した大雅を迎えた花。……ソファの前のテーブルに、野菜の種が置きっぱなしだったことに気づいた。「そうです……早々に種を買っちゃって」「やってみたらいいよ」「はい……」すでに春希は寝室で眠っている時間。花は大雅の前に夕食を用意した。「あ、今日……春奈さんと圭一さんが来てくださいまして」「そうみたいだな。メッセージが来てた」「は……春くん大喜びで、もう、飛んだり跳ねたり大変で……あの、だから今日もいつもより早く寝ちゃって……」話さなければいけないことがいくつもあるのに、そんな話題を出せば、私たちの暮らしが変わってしまいそうで怖い。「春希は、本当にあの夫婦に懐いてるよな」「え?」言い方に違和感を感じて、つい聞き返してしまった。「実は少し前から2人に言われてるんだ。……春希の、幼稚園入園のこと」「あ、そういえば、そんな年齢ですよね」「そう言われて、少し考えているんだけど」花が用意した料理に手を付けながら、大雅は思い切ったように話し始める。「鈴里大雅っていう存在が、幼稚園や小学校に通うようになった春希に、相当な不便を強いるようになるんじゃないかって」押しも押されぬ国民的スターが保護者である子供を、近所の幼稚園に通わせるわけにはいかないということだ。「それじゃ、芸能人の子供が多く通うような幼稚園に?」そんなところがあるのかわからないけれど……そういう場所に通わせるとしたら、大雅さんは春くんと一緒に園内見学とか行くのだろうか。……そしたら、子供と一緒に暮らしていることが世間に知られるかもしれない。自分の子供ではないとしたら誰の子なのかと話題になって……亡くなった姉の子供だと暴かれたら、春くんもマスコミに狙われる?同時にもし……私との結婚が公になったら。その関係性は、センセーショナルに世間を賑わすだろう。そうなった場合、一番にダメージを負うのは誰?大雅さん……そして春くん……スキャンダルでドラマやCMを降板になったら、莫大な違約金を背負う可能性があると聞いた話を思い出した。「花……?まだ、決まったわけじゃないから」「え……あの、ごめんなさい。ちょっと考え事をしていて」いつの間にか大雅の話を聞き漏らしていたらしい。テーブルの向こうから花の手を取り、じ

  • スターの冷たいプロポーズ〜今さら愛してると言われても……   50.真実を知った花は……

    「はなちゃん……?おうまさんの、」小さな手が膝に置かれてハッとした。「あ……ごめんね春くん、なに?」『おうまさんのパッカ』と描かれた絵本を差し出され、読んでくれと言われていると察した。「パッカのお話か!いいよ〜始めようか?」「うん!」膝に乗せた春希の小さな温もりと重みが伝わってきて……ふと思った。この子が、私の腹違いの弟なんて。権堂の悪事が白日のもとに晒されて……大雅と話したあの夜から数日が過ぎた。権堂から鍵を返却されたものの、大雅は玄関の鍵をすべて変える手配をして、帰宅も今までより早い。それはまるで、私がいなくなることを恐れているかのようだった。「……おうまさんのパッカ、始まり始まり〜!」笑顔を作って情感豊かに読み進めると、みるみる春希が絵本の世界に入っていくのを感じる。そうなると嬉しくなって、悪者のセリフでは低い声を、主人公は明るい声を出して声優のように演じた。おしまい……の合図で、次の絵本を持ってくることもあれば、庭に飛び出していくこともある春希。……今日はできたら、もう少し膝の上にいてほしい。「はなちゃん」「なぁに?……」見上げるつぶらな瞳は、弟の結人に似ているかもしれない。「だいすき……っ!」まるで複雑な心の内を見透かすようなハグに、花は涙が溢れそうになった。春希のことを考えれば、このまま3人で暮らすのは不自然だと思い始めていた。だって私とは姉弟で、大雅さんにとっては甥っ子……知らない人が見たら家族のようでも、実はそんな複雑な関係性だなんて、春希も成長と共に思い悩むだろう。たとしたら、やっぱり私が。涙を引っ込めて笑顔を作る花に安心したのか、春希は庭に飛び出していった。「大雅さんにお願いして、この秋は庭で野菜を育ててみたかったんだけどな」大根、白菜、ほうれん草……すでに買ってある種を引き出しから出して眺めていると、携帯がメッセージの着信を知らる。「あ……春奈さん」春奈と圭一夫妻が、近くまで来たので春希に会いたい、という内容だった。花は庭にいる春希に声をかけた。「春くん!春奈さんと圭一くんが遊びに来てくれるって!」庭で飛び跳ねる春希。……本当によく懐いていて、見ていて微笑ましい。そういえば2人は、春希の出生について知っているのだろうか……「突然ごめんなさいね!急に来ると興奮しすぎて、春くんお昼

  • スターの冷たいプロポーズ〜今さら愛してると言われても……   49.真実の先の悲しみ

    「花、ごめん……合鍵まで作ってると思わなかった。怖かったよな」2人きりになり、花を抱きしめる大雅。言葉もなくゆらりと体を預ける花を、心配そうに見下ろした。「何か、言われたか?」「クビに、なったって……」「あぁ。事務所が寮として借りてた権堂の部屋から、俺の写真が大量に見つかってな」事務所の同僚マネージャーと飲んでいて、部屋に送った時見てしまったという。「いわゆる……盗撮。着替えてる姿とかうたた寝してるところとか。外に出ない何気ない俺の写真をこっそり撮ってたらしい」「それを事務所が知ることになって、三井さんが……」「あぁ。マネージャーが2人になった」「いつか三井さんがここへやって来たのも、もしかしたら証拠を押さえるために……?」「そうだ。うちへ出入りした時、不審な行動をしないか、隠しカメラを仕込んだ。それを見せられて確認した。俺が海外へ仕事に行ってた時、ここで権堂が我が物顔で過ごしてたこと」あぁ……あの日のこともちゃんと撮られていたのか。「ごめんなさい。報告したかったんですけど、権堂さんが自分で話すってメッセージを送ってきて……おまけに元カレとカフェで再会した写真も撮らていて、大雅さんにバラすって脅されて、すぐに言えませんでした」「元カレの話はちゃんと聞いたからもういいよ。ただ、俺には何も知らされてなくて、合鍵を作られてるとは気づかなかった」無事でよかったと抱きしめる腕の中は温かくて安心できたけれど、耳に権堂の言葉がこびりついている。「あの、父が2年前失踪したって話はしたと思うんですけど……」話しだしたのを見て、大雅は体を離し、並んでソファに腰かけた。「確か……大雅さんのお姉さんが事故にあったのも2年前でしたよね。……何か、関係があるんですか?」『殺したのはあんたの親父さんだよ』さっき権堂に言われた言葉が耳の奥でこだましている。いつか……de.san.Jalenoのスザンナさんに聞いた話を思い出した。父が、母以外の女性を連れてきたこと。遺影の写真を携帯のカメラで撮ってスザンナさんに見せれば、同じ女性かどうかわかる……ふと、そんなことまで考えてしまった。「関係……ないよ」「でも……今、権堂さんに言われました。春くんの父親は私の父で、母親は、大雅さんのお姉さんだって……」いつの間にか、まっすぐ見つめ合う視線が離れていた

  • スターの冷たいプロポーズ〜今さら愛してると言われても……   48.父の失踪を知る権堂

    後ろから大雅が入ってくるのを待ってしまった……「あのさ、」明らかに様子がおかしい。「大雅には、鈴里大雅にはさ、履いて捨てるほどの才能があんだよ」「あの、権堂さん……?」「それを、俺は一緒に育てて……いつか世界に羽ばたくあの人を支えたかった。だから、海外のエージェントにも顔を売って、プロモーションも積極的にしたのに……」大きな体がユラユラ揺れて、ついにダイニングテーブルにぶつかり、その拍子に大きな音がして、花は思わず飛び退いた。権堂はだらしなく尻もちをつく。「あんたが見つかってからだよ、大雅さんがおかしくなったのは……」床に座った状態から、椅子を支えに立ち上がろうとしている。……うまくいかず足がもつれているところを見ると、相当酔っているらしい。私が見つかってからおかしくなったというのはどういうことだろう。「血眼になって探してたんだ。あらゆるツテを使って興信所に頼んで……寝る暇もないほどの忙しさの中で、まるでそれが生きる意味みたいに……」「あの、探してたって……大雅さんは誰を探してたんですか?」「それはそれは……壮絶な姿だった。睡眠薬が手放せなくなって、心配した」探してたという言葉の意味を尋ねたそばから、睡眠薬という言葉にピンときた。インフルエンザで寝込んだ時、飲み物を探した冷蔵庫にあった心療内科の薬袋……花には意味がわからない話ばかりだ。大雅は誰を探していたというのか……私を?それともほかの誰かを……「はっ?!あんたまだ知らないの?じゃあ教えてやるよ」やっと立ち上がった権堂が花に近づいてくる。「大雅さんの姉さんが亡くなったのは知ってるか?」「し、知ってますけど」「殺したのはあんたの親父さんだよ」「……え」心臓がひとつ、大きく拍動した。そして早鐘のように大きく、早く鼓動を始める。「父は、大雅さんのお姉さんと、知り合いだったんですか……」突然の失踪と関係がある?いったいどういうこと?それに……「大雅さんは、はじめから私を知っていた…………?」考えを巡らせていて、目の前に大きな影が近づくまで、権堂の動きに気づかなかった。「……や、やめてくださいっ!」手を伸ばし、花の背中に絡める権堂。酒の匂いが強く立ち込めてむせ返るほど。「大雅さんと一緒に海外進出したかったぁ……ずっとあの人のマネージャーでいたかったぁ……だからいつ

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status